土と微生物
Online ISSN : 2189-6518
Print ISSN : 0912-2184
ISSN-L : 0912-2184
ホウレンソウ根部病害とその病原菌の生態
内記 隆
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 25 巻 p. 9-16

詳細
抄録

岐阜県高山市を中心おする冷涼地帯のハウス栽培ホウレンソウの根部病害の発生とそれに関与する病原菌の生態について調査研究を行った。ホウレンソウの根部病害の発生は栽培初期の5月と末期の10月に少なく,6〜9月に多い。子葉期の立枯病はP. aphanidermatum, P. paroecandrumによるものが多く,とくに夏期に被害が大きい。その他2〜4葉期の立枯病はR. solaniによることが多い。R. solaniは5葉期以降の株腐病の原因ともなる。R. solaniを菌糸融合により類別すると第4群が最も多く,その他水田跡地のハウス土壌から第2群,第2型が多く分離された。生育中期以降F. oxysporum f. sp. spinaciaeによる萎ちょう病が発生する。萎ちょう病は高温で発生し易く,とくに夏期に被害が著しい。F. oxysporum f. sp. spinaciaeによる萎ちょう病は黄褐色の軽埴土壌,連作年数の多い土壌,水田跡地より畑地土壌,標高の低い地帯で発生が多い。R. solaniによる立枯病と株腐病,Pythium属菌による立枯病は一部黒ボク土壌を含む灰〜黒色の埴壌土,水田跡地のハウスで発生し易い傾向にあった。

著者関連情報
前の記事 次の記事
feedback
Top