土と微生物
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火山灰草地土壌の微生物バイオマス窒素の無機化に及ぼす石灰施用の影響
丸本 卓哉岡野 正豪西尾 道徳
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1990 年 36 巻 p. 5-10

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抄録

石灰施用による草地土壌の酸性矯正に伴う,土壌窒素の無機化促進における土壌バイオマスの役割について解明を試みた。1)炭カル施用で土壌呼吸が促進され,無施用土壌に対するCO_2-C発生の増加量は,0〜5日で最も多く,その後は徐々に増加した。2)供試土壌では培養直後に急激なNの有機化が生じた。これはルートマット層以下の嫌気的土壌が好気的に培養されたのに伴い,微生物が嫌気的から好気的代謝に切り替えたためと考えられた。そして,無施用土壌の値を差し引いた炭カル施用土壌の無機態Nの増加量は2日目と15日目にピークを示した。3)くん蒸法で測定した土壌バイオマスCは,無施用土壌でも培養に伴って徐々に減少したが,炭カル施用によって施用直後に急激に減少し,その後徐々に回復した。直接法で推計した糸状菌Cは無施用土壌でほぼ一定であったが,炭カル施用直後に急激に減少し,その後徐々に回復する傾向を示したのに対し,細菌Cは炭カルの無施用及び施用土壌でともに培養初期から著しく増加した。4)以上の結果から,草地土壌の炭カル施用による酸性矯正に伴って,糸状菌菌体のかなりの部分が死滅し,死菌体の細胞質成分を細菌が分解して増殖するために,施用直後に土壌呼吸によるCO_2の発生やNの無機化促進が生じ,その後に糸状菌死菌体の細胞壁成分が細菌や生き残った糸状菌に徐々に分解されて,土壌呼吸やNの無機化が徐々に増加するという過程が推定された。

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