土と微生物
Online ISSN : 2189-6518
Print ISSN : 0912-2184
ISSN-L : 0912-2184
根粒非着生Rj遺伝子保有ダイズ「ボンミノリ」と根粒菌「A1017」間における根粒形成過程
赤尾 勝一郎
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 36 巻 p. 11-20

詳細
抄録

ダイズ「ボンミノリ」に根粒菌株A1017を接種しても根粒の形成は極めて少ない。接種根粒菌が宿主を認識して侵入し,根粒を形成するに至るまでには複雑な過程を経過するので,宿主ボンミノリと菌株A1017とにおける親和性の欠除がどの過程で生じているのかを明らかにしようとした。本報では,菌株A1017の宿主ボンミノリの根毛への接着,根毛のカーリング,感染糸の形成を,正常に根粒を形成する宿主エンレイおよび菌株IRj2101との比較において検討した。なお,皮層細胞の分裂に就いても若干の検討を加えた。その結果,菌株A1017を接種したボンミノリにおける根粒着生数は,個体当り2粒以下と極めて少なかったが,根粒の窒素固定(アセチレン還元法)は正常に機能していた。また,菌株A1017のボンミノリ及びエンレイの根毛への接着,並びに菌株IRj2101のボンミノリの根毛への接着に異なる点は認められなく,菌株A1017とIRj2101接種によるボンミノリ根毛のカーリング及び感染糸の出現頻度に差は認められなかった。これらの事実から,菌株A1017とボンミノリとの共生成立過程のうち,菌株の根毛への接着,根毛のカーリング,感染糸の形成までは正常に進行していることが明らかとなった。菌株A1017を接種したボンミノリでは,根粒組織形成の初期段階に相当する一次根粒分裂組織の発生数と,それら分裂組織のサイズが,どちらも菌株IRj2101接種のそれらに比べて少なく,菌株A1017とボンミノリとの親和性の低い原因として,皮層細胞が分裂して根粒組織へと発展する過程が正常に作動していない可能性が強く示唆された。

著者関連情報
前の記事 次の記事
feedback
Top