土と微生物
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火山灰土壌における微生物の単位バイオマス当たりの呼吸速度と炭素収支 : 三種の土地利用間の比較
佐藤 輝瀬戸 昌之
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2000 年 54 巻 1 号 p. 13-21

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抄録

土地利用形態(農耕地,果樹園および森林)の異なる火山灰土壌(東京都)における微生物バイオマスと二酸化炭素の放出速度(現地測定)の季節変動を測定した。土壌中(深さ0〜20cm)の微生物バイオマスに季節変動はなく,農耕地で30g C m^<-2>,果樹園で35g C m^<-2>,森林で110g C m^<-2>となった。二酸化炭素の放出速度(R, g C m^<-2> day^<-1>)と深さ5cmの地温(t,℃)との回帰式は,農耕地でR=0.442e^<0.0655t> (r=0.91),果樹園でR=0,544e^<0.0624t> (r=0.94),森林でR=0.418e^<0.0833t> (r=0.97)となった。農耕地,果樹園および森林の年間平均地温それぞれ20℃,18℃および14℃を用いて,野外の二酸化炭素の放出速度を推定すると,それぞれ1.6g C m^<-2> day^<-1> (600g C m^<-2> year^<-1>), 1.7g C m^<-2> day^<-1> (610g Cm^<-2> year^<-1>)および1.3g C m^<-2> day^<-1> (490g C m^<-2> year^<-1>)となった。農耕地,果樹園および森林の深さ0〜20cm土壌における植物根と大型土壌動物の呼吸量が,全土壌呼吸量に占める割合は比較的小さかったので,微生物由来の呼吸量は,土壌からの全二酸化炭素放出量のそれぞれ99%, 89%および77%であると推定された。以上の結果から,土壌微生物の単位バイオマス当たりの呼吸速度は,農耕地,果樹園および森林で,それぞれ54, 43および9mg C g^<-1> biomass C day^<-1>と推定された。野外の土壌微生物の菌体生産効率を0.1と仮定すると,微生物バイオマスは,農耕地と果樹園では年間2回,森林では年間0.3回程度しか分裂できないことが示唆された。

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