土と微生物
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病害防除と微生物多様性 : 土壌消毒が微生物群集及び植物病原菌に与える影響解析(農業生産と微生物多様性,シンポジウム)
星野(高田) 裕子松本 直幸西村 範夫藤田 和久紀岡 雄三
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2005 年 59 巻 2 号 p. 77-82

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抄録

土壌病害の防除に幅広く用いられる土壌消毒は,環境影響に関する懸念から今転換点に差し掛かっている。土壌微生物は物質循環や病害抑制など土壌の健全性を保つために重要な役割を担っており,効果的な病害防除のためにも,土壌微生物群集に対する土壌消毒の影響評価が求められていた。このような状況を背景に,土壌中の微生物群集について,培養によらない手法で土壌消毒の影響解析が近年多く行われている。微生物群集のバイオマスと大まかな構造を知る方法として,キノンプロファイル法やリン脂質脂肪酸分析(PLFA)がある。さらに,土壌から直接抽出したDNAを用いる分子生物学的手法ではバイオマスの測定は難しいが,存在する微生物の詳しい系統的位置が解析できる。これらの手法の利用により,土壌消毒は微生物群集構造に影響を与えることが明らかになった。また,土壌消毒により土壌の機能の一つである静菌作用が失われることも報告されている。このような現象は,農業現場で問題となっている。微生物群集構造とその機能発揮の詳細な関連の解明は今後の課題であるが,新たな手法を用いた解析による研究発展に期待が持たれる。

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