2006 年 60 巻 1 号 p. 11-15
クロロホルムくん蒸抽出法の黒ボク土への適用性を高めるために,土壌に対する抽出液の比(土:液比)を変化させることによって無機リンの抽出効率及び無機リン回収率を高め,遊離した無機リンの再吸着を減少させることを試みた。北海道農業研究センター内の多腐植質黒ボク土を用いて検討した結果,土:液比を従来の1:20から1:40にすることで非くん蒸処理,くん蒸処理,無機リン添加処理のいずれにおいても無機リン抽出量が増加し,無機リン回収率の向上と同時に変動係数の低下が認められたことから,クロロホルムくん蒸抽出法の欠点として指摘されているリン酸の再吸着の影響が小さくなり,土壌バイオマスリン測定値の精度が高くなった。この土:液比=1:40の改良法で測定した土壌バイオマスリンは土壌バイオマス窒素と有意な相関があることから,本改良法による土壌バイオマスリン測定値は従来法で測定される土壌バイオマス量を反映していた。また,道立十勝農業試験場内の淡色黒ボク土,十勝管内更別村の黒ボク土,熊本県農業研究センター内の厚層多腐植質黒ボク土で改良法によりバイオマスリンを測定した場合にも無機リン抽出量の増加,無機リン回収率の向上が同様に得られたことから,道内外の黒ボク土への適用が可能であった。