土と微生物
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根面に棲息する硝化細菌(<特集>植物根圏の微生物・微小動物の機能と相互作用)
佐藤 一朗高橋 令二徳山 龍明
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2007 年 61 巻 1 号 p. 49-53

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抄録

硝化細菌(アンモニア酸化菌,亜硝酸酸化菌)は土壌や水圏などに普遍的に存在し,窒素循環において欠かせない微生物である。硝化細菌はかつて窒素肥料を流亡させる有害な微生物とされていた。そのため硝化抑制が注目され,硝化を抑制する植物の探索が行われた。近年,汚水浄化はもちろん家畜排泄物の堆肥化の過程で発生するアンモニアの脱臭においても硝化細菌が利用されるようになり,多様性の解析,分離菌株の獲得およびその効率化が行われるようになった。一方,湖沼に繁殖するヨシなどの水棲植物の根面にはアンモニア酸化菌が棲息し,汚水浄化に重要な役割を果たしていることが分子生物学的手法や培養法によって明らかにされた。イネ科植物は硝化を抑制することが報告されていたが,顕微鏡観察ではイネ根面の細菌相の10%以上がアンモニア酸化菌で占められていたことが報告されており,水稲根面から硝化細菌の純粋分離菌株が得られたことも報告されている。オオムギ根面から分離した亜硝酸酸化菌(Nitrobacter sp, PJN1株)は宿主であるオオムギ根の分泌物で生育が顕著に促進されることが認められ,植物根と親和性の高い硝化細菌の存在が明らかになった。

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