土と微生物
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土壌リンの存在形態と生物循環
武田 容枝
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2010 年 64 巻 1 号 p. 25-32

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抄録

リン酸肥料の消費量を削減するために堆肥や緑肥などの有機質資材を利用することが望まれるが,資材施用後のリン動態に関する情報は不足している。化学肥料や動物性資材を施用した土壌ではリンが蓄積しており,蓄積リンの有効活用が課題となっている。有機質資材は土壌微生物の重要な炭素源である。微生物の中には蓄積リンを溶解または分解できるものも存在し,微生物の活性化は蓄積リンの有効化につながると考えられる。微生物に吸収されたリンは細胞溶解や捕食者の摂食により放出される。微生物を介したリンの代謝回転は炭素や窒素よりも速く,リンの固定を抑制する効果がある。また,有機質資材を用いた土壌におけるリンの代謝回転は化学肥料施用土壌よりも速いことが示されており,微生物によるリン循環が植物栄養上いかに重要であるか推察される。微生物バイオマスリンの定量法にはいくつか問題点があるが,その改良によってトルオーグ法やプレイ法では評価できない微生物を介したリンフラックスのより正確な評価が可能となる。さらに,圃場レベルで微生物バイオマスリンと作物リン吸収との関係を追求し理解を深めることが有機質資材の有効利用につながると考える。

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