2013 年 67 巻 2 号 p. 54-57
環境保全型農業生産システムの確立には,化学合成農薬および化学肥料の使用量の削減が重要な要素技術となる。農薬の使用は要否を判断する科学的指標が普及されておらず,農薬使用は極めて経験的であり,不必要な農薬使用をまねく。これらの不必要な農薬使用を軽減させるためには,農薬使用の要否を判断する基準の普及が必要である。線虫害は土壌中の植物寄生性線虫密度に依存するため,植物寄生性線虫密度を基にした要防除水準の設定に関して,これまで多くの研究が行われてきた。しかし,植物寄生性線虫密度だけではその被害を正確に予測できないケースが存在する。土壌化学性・生物性は線虫害や植物寄生性線虫密度に関与していることが報告されている。これらの報告から,線虫害は,植物寄生性線虫だけでなく,その他の土壌生物性評価を取り入れた基準を作成することにより,より正確に線虫害を予測することができるようになると考えられる。