農業者にとって厄介な土壌伝染性病害は,特定の畑により「連作」されることが主たる原因だと考えられる。しかし,農業者が複数品目を輪作し,経営することは難しい。そのため,しばしば土壌消毒が防除対策技術として励行され,農業者の大きな負担となっている。また,土壌消毒効果の安定性・持続性に対する農業者の不安もあり,土壌改善(土づくり)に対する期待も大きい。近年,分子生物学の飛躍的進展により,土壌の生物性を解析できる遺伝子解析法が開発され,長野県の萎黄病発生履歴のあるセルリー圃場で検討を行った。その結果,土壌消毒処理により,土壌中の多様性は低下するもののその後は回復する。しかし,圃場毎にその回復には差が認められ,土壌消毒処理後,多様性が速やかに回復する圃場は,萎黄病の発生は少ないが,回復が遅い圃場は,萎黄病が多発する傾向にあった。現状では,これらの診断ができるのみで,農業者が知りたい「どうすれば防除できる?」「どうすれば発病しにくい土になる?」といった土壌改善(土づくり)の処方にはほど遠い。今後,土壌,土壌微生物,土壌病害の専門家などが一層連携し,新たに生まれてくる課題に取り組んでいくことが期待される。