抄録
古くから酸性土壌で硝化活性が確認されていたが、アンモニア酸化細菌(AOB)の純粋培養におけるpHの低限は約6.0であることから、酸性土壌の硝化菌の正体は不明であった。しかし、好酸性型アンモニア酸化古細菌(AOA)が2011年に分離され、酸性環境での硝化の担い手が明らかになったかにみえた。しかしAOAの菌数が少ない土壌でも高い硝化能が認められ、酸性土壌の硝化の実態には不明な点が残った。我々は強酸性茶園土壌から耐酸性のアンモニア酸化細菌(AOB)TAO株を分離した。TAO株はγ-プロテオバクテリアに属していた。γ-AOBはNitrosococcus属のみが知られており、好塩性で海洋や塩湖に特有とされていた。TAO株は生理的性質とゲノムの特徴から新属新種としてCandidatus Nitrosoglobus terraeと命名した。一方、TAO株を分離した茶園土壌のamoAのDNAとmRNAを定量したところ、TAO株のamoAは、DNAとmRNAともに他のアンモニア酸化菌より多いことから、TAO株が供試土壌中で機能していることが示された。