土と微生物
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軟腐病菌についての研究動向
染谷信孝澤田宏之濱本 宏諸星知広
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2020 年 74 巻 2 号 p. 66-76

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抄録

軟腐病は,土壌伝染性の多犯性細菌病である。植物組織を軟化腐敗させ,その際には独特の臭気を伴う。我が国では主に野菜類の主産地で問題となり,気象条件によってしばしば大きな被害を生じる。病原細菌種は主にPectobacterium carotovorumおよびその亜種とされてきたが,近年の分類体系の変遷から,現在では10 種以上が軟腐病の病原となることが分かってきた。我が国において過去に軟腐病の病原として分離・同定されてきた細菌株についても,P. carotovorum以外の種が混在している可能性がある。本病は土壌,灌漑水など様々な環境中に存在し,宿主植物の周辺で急激に増殖し,一定密度を越えると発病に至る。本病の防除は,銅剤や抗生物質などによる化学的防除が基本となるが,生物農薬の普及も進みつつある。近年の研究成果を活用した,農業現場での迅速な病原細菌の検出技術および新規防除技術開発が期待されている。

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