土と微生物
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阿蘇地域で生産される野草堆肥および その施用土壌等における拮抗菌の分布と性状
龍田 典子 居石 優子古賀 夕貴坂本 唯乃三谷 果穂阿部 紘乃上野 大介染谷 孝
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2021 年 75 巻 2 号 p. 70-78

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抄録

熊本県阿蘇地域で古くから活用されている野草堆肥や野草牛糞堆肥,およびそれらを施用した土壌など121 点について, 多犯性植物病原菌Fusarium oxysporum に対する拮抗菌の密度を直接選抜培養法を用いて測定した。野草堆肥はチガヤなどを野外で腐熟させたもので,その試料30 点は105 ~ 108(平均4.9 × 106)CFU/g 乾物という比較的高密度の拮抗菌を含有していたが,野草ロール13 点と野草牛糞堆肥17 点ではND~ 107(平均4.5 × 105)CFU/g 乾物と低かった。また,野草堆肥施用土壌43 点では,無施用土壌7 点と比べて拮抗菌密度が数倍~十数倍高かった。得られた拮抗菌408 株のうち400 株(98%)はディスク法でフザリウムに対する抗菌活性が確認され,直接選抜培養法の妥当性が検証された。また大多数(47 株の83%)の株がピシウムやラルストニアにも抗菌活性を示した。16S rRNA 解析により,阿蘇のどの試料からの拮抗菌もほぼ全てBacillus amyloliquefaciens ないしその近縁種と判明した。以上から,野草堆肥が土壌伝染性病害の軽減に貢献している可能性が示された。

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