抄録
本研究は,土壌団粒の孔隙特性がN₂O還元微生物群集およびその活性に与える影響をマイクロスケールで解明することを目的とした。地球温暖化の要因であるN₂Oは,農耕地土壌において生成と還元が微生物活動に依存しており,その発生量は時空間的に大きく変動する。我々は,孔隙率と孔隙連結性が異なる黄色土および黒ボク土を対象に,放射光X線μCT,微小電極法,微生物群集解析を組み合わせた独自の手法をもちいて調査した。その結果,黄色土団粒では孔隙率が低く閉鎖孔隙が深部に集中し,大気O₂の供給が制限されることで嫌気環境が広がる一方,黒ボク土団粒では開放孔隙が多くO₂供給が維持された。N₂O濃度と発生フラックスは黒ボク土で顕著に高かったが,黄色土ではN₂O還元が優勢であることが示唆された。さらに,N₂O還元菌は両土壌ともにクレードIとクレードIIに分類されたが,黄色土では嫌気環境に適応したクレードIIが深部で優占した。本研究は,土壌団粒の孔隙特性が土壌のN₂O動態を左右することを明らかにし,温室効果ガス削減策への新たな知見を提供するものである。