日本セキュリティ・マネジメント学会誌
Online ISSN : 2434-5504
Print ISSN : 1343-6619
研究論文
安心の本質とは何か? ~ 現象学的科学論の理路による安心の構造モデル ~
甘利 康文
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2021 年 34 巻 3 号 p. 3-21

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抄録

「安心」という言葉が指し示しているそのものは主観,そして概念であって,自然界に存在するものではない.そのため,一般に科学的とされている方法論によっては,安心の本質,すなわち「安心とは何か」は追究しきれない.本研究では,古今東西,文化文明の種類を問わず,人々に安心感を提供し続けている存在である広義の宗教概念,「レリギオ」を対象に,現象学を基盤とする科学論の方法論を適用して,そこに潜在する「人々に安心を感じさせる構造」の抽象を試みた.レリギオから抽象された安心感を生み出す構造は,人々 の意識に「(a)異なる存在としての〈大いなる力〉が立ち現れていること」,および「(b)いざという時,その〈大いなる力〉が,自分を助ける側に立ってくれるだろうという感覚(立ち現れ)があること」に集約される.これら2 つを再構成し,社会に実装することで,人々に安心感をもたらための制度的な社会インフラを作ることが可能となる.

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