日本セキュリティ・マネジメント学会誌
Online ISSN : 2434-5504
Print ISSN : 1343-6619
解説
紙社会の印鑑文化とデジタル社会のトラストサービス
柴田 孝一
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2021 年 34 巻 3 号 p. 33-38

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抄録

COVID-19 の影響で、これまで連綿と築かれてきた紙による記録社会から、デジタル社会への展開が加速 されている。紙社会の慣習によって担保されてきた信頼関係は、技術の革新で、記録の意味である真正性の 確保が困難になってきていることが浮き彫りになった。一方で、デジタルは便利であるが、跡形もなく修正 できるという性質から、その完全性を確認することへの漠然とした不安が利用者にはある。この不安を払拭 し、これからの社会の成長エンジンである「情報」を安心・安全に流通するためには、電子署名やタイムス タンプといったデジタル情報の完全性を担保する技術が有用である。 本解説では、人間社会において、「情報」を記録することの意味とリスクを整理し、デジタル社会におい てリスクを回避する手段としてのタイムスタンプや電子署名の役割を明確にした。しかし、それらのサービ スが利用者においてトラストを生み出すためには、国際的に通用する標準であること、誰もが納得できる完 全性が確保できていること、透明性がある運用基準で継続して提供されていること、法的に有効であること が求められる。これらをクリヤするトラストサービス基盤の制度創りの必要性を訴求する。

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