2022 年 36 巻 2 号 p. 27-33
差分プライバシーは,様々なプライバシー保護手段に対し,その安全性を統一的に与える枠組みである.差分プライバシーは未知の攻撃を含めた任意の攻撃に対して安全性を保証可能であるなどの優れた特徴を備える一方で,その定義は「とっつきにくい」ものであり,それが差分プライバシーの応用や普及を阻害する一因になっているとも思われる.本稿では,差分プライバシーの概要と特徴を簡単に紹介するとともに,その定義や安全性パラメータ(ϵ)の解釈について,統計的仮説検定に基づく操作的解釈を中心に説明する.この解釈を用いると,ϵの値は仮説検定における有意水準と検出力との関係を束縛するパラメータとして定量的に理解することができる.