抄録
本論文は,IT/OT統合環境におけるサイバーセキュリティ机上演習(TTX)の結果を定量的に測定し,事前教育による効果を明らかにすることで実証的知見の不足に取り組む.従来のTTX評価は主観的フィードバックに偏り,演習結果やその効果の透明性や再現性が確保されていなかった.本研究は,この課題を克服するため,TTX評価に教育工学的アプローチと統計的検証を導入した.事前教育の異なる参加者でのTTXにおける行動変容を比較分析し,初報までの時間という客観指標でTTX結果を定量的に分析した.分析の結果,報告先の専門性によって最適な教育内容が異なることを発見した.CSIRTへの初報はITセキュリティ教育によって著しい効果(高い効果量)が得られる一方,経営層への報告はOT知識を含む統合教育によって追加的な改善効果が確認された.これは,TTXの実施結果が,教育内容と報告対象の認知的要求の適合性によって最大化されることを意味する.本研究は,TTX評価を主観から科学的検証の領域へと転換させ,IT/OTハイブリッド人材育成の費用対効果を論じるための重要な統計的エビデンスを提供する.