外科と代謝・栄養
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特  集
ブドウ糖負荷に対する糖代謝ホルモン動態の消化管の部位による違い
山本 寛Vo Nguyen Trung貝田 佐知子山口 剛村田 聡谷 眞至
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2016 年 50 巻 4 号 p. 199-204

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抄録

 高度肥満症に対する減量手術は,2型糖尿病(T2DM)をはじめとするメタボリックシンドロームを改善する効果があり,肥満T2DMのみならず,非肥満糖尿病患者に対してもT2DMを手術で治す,いわゆるメタボリックサージェリーが注目されている.しかし,手術によりT2DMが改善するメカニズムは明らかにされていない.基礎的・臨床的検討から,手術により過剰分泌するインクレチンをはじめとする消化管ホルモンがT2DM改善のキープレーヤーであることが考えられている.特に,消化管の部位により分泌される消化管ホルモンが異なることが重要であると考えられる.
【方法】今回われわれは,ラットの胃・十二指腸・空腸・回腸の異なる4カ所の消化管に栄養チューブを留置したモデルを作成した(各n=10).チューブ留置1週間後に,意識下ラットに栄養チューブより50%ブドウ糖をゆっくりと注入し,ブドウ糖負荷後0,10,30,60,120,180分に大腿静脈カテーテルから採血し,血糖・インスリン・GLP-1を測定した.インスリン感受性はMatsuda indexを用いて評価した.
【成績】回腸からのブドウ糖注入では,他の部位に比較し,ブドウ糖負荷後の血糖は低値を示した.ブドウ糖負荷後の血中インスリン・GLP-1は,胃・回腸からの注入に比べ十二指腸・空腸からの注入で高値を示した.インスリン感受性は,十二指腸・空腸からの注入に比べ回腸からの注入で高値を示した.
【結論】ブドウ糖負荷後の血糖・インスリン・GLP-1値は,ブドウ糖を注入する消化管の部位により異なった反応を示した.十二指腸・空腸をバイパスし,回腸に直接ブドウ糖を負荷することにより,インスリン感受性が高まり血糖上昇は抑えられた.

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© 2016 日本外科代謝栄養学会
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