2017 年 51 巻 1 号 p. 33-39
外科侵襲後の生体では,恒常性を維持するために合目的な生体防御反応が起こる.しかし,過度な侵襲もしくは免疫応答異常のある患者においては,免疫担当細胞から産生される過剰な炎症性サイトカインが発端となり合併症・臓器障害にいたってしまう.近年,内分泌・免疫臓器としての脂肪組織が注目されており,アディポサイトカインと総称される生理活性物質が次々と発見されている.ビスファチンはなかでも比較的新しいアディポサイトカインで,種々の炎症性疾患との関与が報告されている.本稿では外科侵襲後の炎症性反応におけるビスファチンの役割について,自験結果に文献的考察を加え概説する.