外科と代謝・栄養
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特  集
各種脂肪乳剤の特徴と代謝
丸山 道生
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2017 年 51 巻 2 号 p. 63-72

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抄録
 わが国では,静注用脂肪乳剤として大豆油100%製剤のみしかないが,世界では,大豆油以外に,中鎖脂肪酸(MCT)やオリーブ油,魚油などを原料とした脂肪乳剤が臨床的に使用されている.大豆油はその脂肪酸組成においてn-6 系多価不飽和脂肪酸のリノール酸が大半を占めており,その代謝産物のエイコサノイドは生体の炎症を惹起させる作用があるため,理論的には大豆油由来の脂肪乳剤は長期投与や重症患者への投与には慎重を要する.この大豆油由来の脂肪乳剤の欠点を緩和するために,生物活性の少ないMCT やオリーブオイルを混合した製剤が開発されてきた.また,違ったアプローチとしてn-3 系多価不飽和脂肪酸を豊富に含む魚油を使用することで,炎症反応を抑えるというn-6 系にない有用な作用をもつ脂肪乳剤も開発されてきた.各種脂肪乳剤の原料の油脂の特徴と現在,世界で使用されている各種脂肪乳剤の特徴を解説し,脂肪乳剤の代謝に関しても記載する.
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© 2017 日本外科代謝栄養学会
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