外科と代謝・栄養
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体液代謝管理研究会・日本輸血細胞治療学会ジョイントシンポジウム
BS-1 周術期血中アルブミン濃度の意義および膠質液使用に対する外科医の認識に関するwebアンケート調査結果
福島 亮治深柄 和彦
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2019 年 53 巻 3 号 p. 57

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抄録

【背景および目的】 周術期の血中アルブミン濃度の臨床的意義や術後アルブミン代謝の変化など、詳細に議論されることは少なく、幾つかの誤解も存在する。例えば血中アルブミン濃度は最も簡便な栄養指標として広く用いられているものの、この低下は栄養状態よりむしろ炎症状態を反映するとされる。術後低アルブミン血症の主要因は血管内アルブミンの血管外への移動である。また、術後をはじめとした急性期にはアルブミンの合成が低下するとの認識が多いようであるが、術後のアルブミン合成に関する研究報告では、アルブミン合成が増加しているとするものがほとんどである。術後の低アルブミン血症にアルブミン製剤を投与する外科医も多いと思われるが、昨今のガイドラインでは安定した周術期患者に対するアルブミン投与は推奨されていない。膠質浸透圧維持目的では、アルブミンのかわりにHESの使用も考えられるが、外科医にとってHESは馴染みが薄い印象である。そこで、このような観点から我が国の外科医の認識について、実態を明らかにすることを目的とした。
【対象と方法】最近行われた2つのWebアンケート調査結果について検討した(日本外科代謝栄養学会・大塚製薬工場企画、マクロミルケアネット実施)。調査は日本外科代謝栄養学会の評議員(H群:n=35)と、ケアネット会員の一般の外科医(G群:n=222)を対象として行われた。
【結果】 術後の血中アルブミン濃度の臨床的意義として最もあてはまるものとしての回答は、(H群:G群)でそれぞれ、栄養指標(23%、42%)、炎症指標(31%、15%)であり、H群で後者が、G群で前者が最多であった。低アルブミン血症の原因として(複数回答)血管外への漏出を挙げたのが(29%、23%)あったが、分解亢進が両群で最も多く(31%、24%)、肝臓の合成低下(14%:4%)や栄養不良(6%、6%)も認められた。また術後(炎症状態下)体内のアルブミン合成が増加すると答えた外科医は(14%:10%)に過ぎなかった。術後低アルブミン血症にアルブミン製剤を投与すると答えたのは(23%:31%)であった。一方術後にHESを使用することがあると答えたのは(40%:82%)であった。
【まとめ】 一般の外科医はもとより、日本外科代謝栄養学会評議員においてもアルブミンに対する誤解が少なからず存在していることが示唆された。

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© 2019 日本外科代謝栄養学会
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