外科と代謝・栄養
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特集「Bench to Bedside:基礎研究成果からみた臨床栄養管理への提言」
外科侵襲時の免疫不全に対する栄養管理
小野 聡青笹 季文辻本 広紀
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2019 年 53 巻 6 号 p. 327-335

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抄録
 外科侵襲後の生体反応を炎症反応の視点から評価しその軽減を図る試みはこれまで数多く行われてきた. 一方, 外科侵襲後の生体では, 著明な炎症反応が惹起されるとともに炎症を抑えるために抗炎症反応が引き起こされ, この抗炎症反応に起因する多くの因子は免疫抑制に関与していることがわかってきた. しかし, 周術期の免疫機能を客観的に評価し得る簡便で有用な指標が存在しないため, 外科侵襲後の免疫不全の病態把握やその対策を評価するうえで大きな障害になっている. われわれは単球の抗原提示機能やCD4陽性T細胞数やそのPD‐1発現率から免疫機能を客観的に評価している.
 また近年, 進行癌症例を対象として術前に放射線治療や化学療法を行ってから手術をする症例が増加し, このような術前治療症例では術後合併症が高率に発生していることが指摘されている. 当然ながらそのような症例では術前から免疫機能が低下していることが推測されるため, 術前治療症例は手術前から免疫機能を回復させるような栄養管理を行い術後合併症を軽減させることが重要である. そのためには経腸栄養などで積極的に腸を使い, 腸管免疫のみならず肺や肝臓での免疫機能を低下させない工夫が必要であろう.
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© 2019 日本外科代謝栄養学会
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