外科と代謝・栄養
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症例報告
膵頭十二指腸切除術後6年目に高血糖によりCA19‐9偽陽性を 呈した膵癌の1例
河合 雅彦小森 充嗣前田 健一服部 公博三井 範基林 弘賢杉本 琢哉仁田 豊生田中 千弘長尾 成敏
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2019 年 53 巻 6 号 p. 343-348

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抄録
 症例は70歳代男性. 6年前に膵頭部癌にて亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行. 術後補助化学療法としてS‐1を1年間内服加療. 4年後に右肺に腫瘍が出現し, 原発性あるいは転移性肺癌の疑いにて胸腔鏡下右肺部分切除術を施行され, 膵癌肺転移と診断された. S‐1内服を再開するも服薬コンプライアンスは不良. 翌年右気胸にて再度胸腔鏡下右肺部分切除術が施行された. 6年後の4月にCA19‐9の急上昇がみられ, 胸腹部単純および造影CT検査で異常は認められなかったが上昇は続き, 膵癌再発が強く疑われ, 同年7月塩酸ゲムシタビン単剤で化学療法が開始された. 化学療法施行時に口渇の訴えあり, 精査したところ血糖値510mg/dl, HbA1cが14.3%と著明高値であった. 強化インスリン療法にて血糖コントロール後, CA19‐9は速やかに正常化した. CA19‐9上昇の一因として高血糖が知られ, 膵切除による二次性糖尿病の発生も起こりうるが, 術後6年を経過し最近は血糖値・HbA1cともに未測定だった. 膵頭十二指腸切除術後の血糖管理の継続性が再認識された.
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© 2019 日本外科代謝栄養学会
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