2020 年 54 巻 2 号 p. 77-80
L‐カルニチンは, 長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に運び込むために必要な物質である. 体内での生合成はその25%程度しかない準必須の栄養素であり, 欠乏時, おもな貯蔵な場所である筋肉から動員される. 神経・筋疾患は, 一次性, 二次性の筋萎縮, 筋変性に伴い, その貯蔵場所を失い, 摂食・嚥下障害から, L‐カルニチンそのものの摂取が減少する. そして, 脂肪酸の主な利用場所である骨格筋, 心筋の症状が加わる. また, ミトコンドリア病, 全身性炎症などミトコンドリアの機能不全も, その神経・筋における欠乏症状に追い打ちをかける. 本稿では, カルニチンのホメオスタシスを保つ摂取量, 合成, 排泄に加え, 神経保護作用など神経・筋疾患に特有のこれらの病態について概説する.