外科周術期サポートとしての茵蔯蒿湯の出番は, 減黄不良の閉塞性黄疸症手術例への術前投与や, しばしば大量肝切除を必要とする肝門部領域胆管癌, 術前肝予備能の低下した原発性肝癌などの肝切除後の高ビリルビン血症に対する予防投与などである. 高度侵襲手術による肝内胆汁うっ滞などにも効果が期待されるが, 感染を起因とした肝内胆汁うっ滞にはまず感染のコントロールを優先する.
留意すべき点として, 有効成分のgenipinは茵蔯蒿湯の構成生薬“山梔子”の成分geniposideが腸内細菌により分解され生成されるので, 健常な腸内細菌叢が保たれていることが肝要である. 術後, 広域抗菌薬の使用により腸内細菌叢が変化していると, 茵蔯蒿湯が有効に働かない可能性がある.
他に同様の働きをする西洋薬が存在しないために, 万が一の場合には使用する意義が大きいと思われる.