【目的】インスリン (INS) は骨格筋に対し最も強力な蛋白同化作用を示すanabolic hormoneであり, 侵襲下においても骨格筋蛋白同化作用をもつことが報告されている. したがってインスリン分泌促進作用 (insulinotropic action, ITA) を有する栄養投与は骨格筋同化作用を発揮する. 今回L‐カルニチン (LCAR) とBCAAのエネルギー投与後のITAに対する効果を検討した. 【方法】健常者39名 (平均年齢20.8±0.1歳) を対象に, 対照群 (C群, n=16) , LCAR単独投与群 (L群, n=10) , LCAR+BCAA単回併用投与群 (L+SB群, n=6), LCAR+BCAA長期持続投与群 (L+CB群, n=7) の4群に無作為に分けた. L群ではLCAR (1,000mg/day) のみ, L+SB群では臨床試験2日前までの14日間のLCARと臨床試験当日にBCAA単回のみ投与, L+CB群ではLCAR (1,000mg/day) とBCAA (7.2g/day) をともに臨床試験前14日間の経口投与した後, 臨床試験を行った. 臨床試験前日よりovernight fastingの後, 当日は運動負荷 (50% VO2 max 60分間) 2時間前に低血糖を予防するために200kcal (栄養補助食品+glucose) のエネルギー投与を行い, エネルギー投与および運動負荷の前後で血糖値([BS]), 血清INS値([INS]) を測定し, 各群のITAについて検討した. 【結果】エネルギー投与前におけるLCAR単独投与群の[BS], [INS]は他の群に比較して有意に低値であった. 運動負荷前かつ栄養投与後では, すべての群で栄養投与前 (Pre EX‐120) に比較して[INS]は増加したが, L群は栄養投与前 (Pre EX‐120) の値はC群の値に比較して有意に低値であった (P<0.05). L+SB群, L+CB群の[INS]は, いずれも著明に増加したが, L+SB群の[INS]はL+CB群の[INS]に比較して有意に高値であった (P<0.05). 【結語】BCAA単回投与によりエネルギー投与後のITAは増強し, BCAA単回投与後と同様にBCAA長期持続投与後でかつ血清アミノ酸値が上昇していない状況でもITAは増強した.
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