抄録
毛管内での溶質分散に関するTaylorの名著を解説した。Taylorは,簡易な毛管実験装置を用いて,毛管内の層流条件での溶質分散現象を測定すると共に,分散現象のメカニズムを理論的に明らかにした。毛管内に投入された溶質の拡がりは,分子拡散と管内の流速分布に規定される。比較的速い流れでは,毛管内の流速分布の影響により直線的濃度分布で幅広く拡がり,遅い流れでは拡がりは縮小され正規確率分布に一致した。溶質移動を偏微分方程式で表し,これを解いて,分子拡散の影響が重要なことを示した。つまり,溶質分子が毛管半径方向に十分拡散出来ない短時間経過後の観測では前者の分布を取り,十分拡散できる長時間経過後の観測では後者の分布となることを示した。後者の溶質移動現象を1次元分散方程式で近似し,拡散型偏微分方程式になることを示した。