2017 年 136 巻 p. 3-14
マルチ栽培では土壌面蒸発の抑制や雑草の発生抑制,地温上昇等の効果が期待される.本研究では,HYDRUS(2D/3D)を用いてマルチ栽培下の土壌水分動態を解析し,湿潤地域におけるマルチ被覆の効果について検討を行った.全てのパラメータを事前に決定することは難しいため,境界条件や根の吸水に関わるパラメータを変えた計算を行い,パラメータを選定した.畝部や表層では体積含水率の計算値は比較的良く実測値と合った.マルチ栽培下での数値解析から,降雨時の土壌水分動態が明らかになった.土壌水分量はマルチ無しのほうがマルチ有りよりも多くなった.さらに,土壌水分量の変動もマルチ無しのほうが大きくなった.これらの解析結果から,湿潤地域におけるマルチ被覆の効果は,降雨による土壌水分量の急激な増加の抑制であることがわかった.