土壌の物理性
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凍結をともなうオホーツク網走地域の農地における土壌水分の季節変動の特徴
鈴木 伸治佐伯 ともみ伊藤 博武渡邉 文雄
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2019 年 142 巻 p. 5-11

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抄録
オホーツク網走地域は,大規模農業が盛んであり,冬季には土壌が凍結する.近年,降雨と降雪のパターンが変化しており,農地の水文環境の変化が懸念されている.本研究では,土壌の凍結と融解,および融雪水の浸透がもたらす水分動態の特徴を明らかにすることを目的に,2011年7月から2012年6月にかけて,オホーツク網走地域の畑圃場における土壌水分動態の連続観測を行った.水移動を解析する際のマトリックポテンシャルの測定には,誘電水ポテンシャルセンサを用いた.最大凍結深は0.28 mであり,表層の土壌水分は,融解直後が1年で最も湿っていた.融雪水の浸透は,非凍結期間の多雨時よりも大きな水フラックスをもたらした.また下層の土壌水分について,土壌 の凍結 · 融解と融雪水の浸透に伴う変化が,非凍結期の無降雨による乾燥とその後の降雨による変化と同等のものであった.さらに,融雪水(116.5 mm)が湛水せずに浸透した.これらのことから,観測された凍結深では,土壌の間隙が多かったことに関連し,透水性の低下が顕著ではなかったことが示唆される.
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© 2019 土壌物理学会
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