抄録
土塊内部に潜在する小ひびは,易耕性に重要な役割を果たしている。代かきが行われた粘土質水田土壌では,乾燥収縮にともない,これらの小ひびの形成が認められる。しかし,その挙動は,根系の有無により大きく異なっている。根系が土壌の収縮に及ぼす影響は,土壌の物理的な固定と水分吸収の二つの働きに起因する。通常,これらは同時に作用するため,機構的な区別が十分なされていない。本研究では,水稲栽培期間中の水田を乾燥させた後に土壌を採取し,それらの体積含水比および気相比と,含まれる根の密度との関係を解析した。その結果,根系は,水分の吸収と土壌の固定の両者を同時に作用させて乾燥時に土壌中に小ひびを誘起しているが,水分を吸収しなくとも,土壌中の細かいひびの発生を増大させる作用があることが明らかになった。