土壌の物理性
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Print ISSN : 0387-6012
インドネシア•南スマトラ•ランポンの熱帯湿潤丘陵地における異なった雑草管理下のコーヒー園からの土壌侵食
アファンディマニク ツマイア カタリナロサディ ブストミウトモ ムハジル千家 正照足立 忠司沖 陽子
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2002 年 91 巻 p. 3-14

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抄録

インドネシア•南スマトラのランポンにおいて,1996年から1999年の雨季の期間,異なった雑草管理下のコーヒー園からの土壌侵食量と地表流出量を観測した。試験区は,⑴地表面の雑草を完全除草したコーヒー園,⑵被覆植物として雑草種Paspalum conjugatumで地表面を被覆したコーヒー園,⑶自然植生の雑草で地表面を被覆したコーヒー園である。雑草の管理は2週間に1回の頻度で行った。試験区⑴では地表面の雑草を完全に除去し,残りの試験区 ⑵と(3)ではコーヒー樹周囲の直径lmの範囲を除草した。観測期間中における当地区の最大日雨量は82 mm,最大10分間雨量強度は120mm/hであった。しかし,全降雨のうち14.2%の最大降雨強度が,土壌侵食発生の限界となる降雨強度25mm/hを上回っていた。U S LE式で用いられる降雨係数R (m2 . t/ h a /h )と日雨量X (mm)の間には, R =1.624 (X-10.9)の関係が成り立った。完全除草区の流出率は7〜15%の範囲で変化し,コーヒーの樹冠の成長にともなって減少した。雑草によって地表面を被覆すると地表流出は著しく減少し,Paspalum試験区では3年目の雨季以降の流出率が0%になったのに対し,自然植生の雑草試験区では4年目から流出率が0%になった。土壌侵食量が最大となったのは2年目の雨季の完全除草区で,22.7 t /haであった。被覆植物を導入すると土壌侵食は著しく抑制され,Paspalum試験区では3年目以降から,自然植生の雑草試験区では4年目から土壌侵食が発生しなかった。完全除草区の土壌侵食量は土壌深にして1年間に1.24mmであり,インドネシアの土壌生成速度を下回っていた。

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© 2002 土壌物理学会
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