日本ストーマリハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2436-8806
Print ISSN : 0916-6440
原著
脊髄損傷患者のQuality of Life(QOL)向上を目的としてストーマ造設を試みた一例
大川 裕美子藤原 けい子千葉 安子山尾 竹子石山 功子村上 貴久日下 貴文奥山 茂樹
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1994 年 10 巻 2 号 p. 1-9

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抄録

 57才男性の低位脊髄損傷患者に,排便管理の容易化と褥創感染の防止を目的にストーマ造設を行い,排便,食事,日常生活,及び褥創の4点に関して,術前と術後1年目の状態を比較検討した。その結果,排便時間の大幅な短縮と,2日毎の定期的な排便習慣を得ることができた。食事については,摂取量は増加し,間食も可能になった。日常生活では,便失禁への不安が無くなり対人恐怖も解消されるなど,身体的,精神的にゆとりが生まれ,Quality of Life(QOL)の明らかな改善がみられた。褥創に関しては,便との接触が断たれたことにより,術中,術後の創管理が容易となり,術直後からの経口摂取も可能となったが,ストーマ造設がただちに褥創の治癒へとはつながらなかった。ストーマ造設へ至る過程でのインフォームドコンセントが,ストーマ管理へ取り組む患者の姿勢を左右する,極めて重要な要因であることが解った。

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