1996 年 12 巻 2 号 p. 21-25
症例は61才、女性。抗精神薬投与のため、慢性便秘が続いていた。平成6年7月直腸癌に対しMiles手術が施行された。平成7年1月より癒着性イレウスに対し保存的治療で軽快し経口摂取を再開していたところ、突然の呼吸促迫・意識障害が出現した。精神科疾患及び代謝性アシドーシスによる意識障害のため腹痛の訴えはなく、腹膜刺激症状も不明であったが、ストーマ粘膜の壊死及び全身状態から壊死型虚血性大腸炎と診断し、緊急手術を施行した。脾弯曲部結腸を中心に虚血性変化を認めたため、左側横行結腸からストーマまでの結腸を切除し、右側横行結腸に単孔式ストーマを再造設した。新しいストーマは、虚血のない部分に造設され、陥凹・狭窄もなく、自立したストーマケアが行なわれている。ストーマの虚血性変化により術前診断が可能であった本症例は“現症”としてのストーマ観察の重要性を示唆している。