抄録
脊髄損傷症例の晩期合併症としての慢性便秘症に関連した消化器愁訴,排便処理状況について342例に全国アンケート調査を行い,201例(57.8%)に回答を得た。
多くの症例が漏便,腹部膨満,腹痛,食欲不振を訴え,摘便,薬物療法,浣腸(グリセリン浣腸薬もしくは微温湯による高圧浣腸)などの排便調整を行っていたが,60分を超えるものは24%におよび,240分を要する例も見られた。
その点,ストーマ造設術の適応とした自験例3症例では,消化器愁訴の消失,薬物による排便調整の不要,排便時間の40-60分への短縮,浣腸による計画的排便,介助者の不要と自己管理の確立,会陰部の清潔維持などが得られた。その結果,社会生活や行動範囲の拡大と活性化,精神的活動の高揚など,QOL向上に大きく寄与すると評価できた。