ウイルス感染した細胞がウイルス増殖を抑えるための生体防御反応の1つとしてアポトーシスがあり、一方NPVはP35やIAPなどによってアポトーシスを抑制することが知られている。これまでに、NPV感染細胞においてアポトーシスが誘発されるか否かは、NPVの抗アポトーシス因子と共に細胞の因子も関与することが示唆されているが、その詳細は明らかでない。そこで各種鱗翅目昆虫の細胞IAPに注目しcDNAの単離を行った。
鱗翅目昆虫のSf9、Tn368、BmN-4においてすでに同定されている細胞IAPの塩基配列をもとに、RT-PCR法とRACE法により、SpLi細胞とLd652Y細胞のIAPのcDNAを単離した。SpLi細胞のcDNAの全塩基配列を決定し、予想されるアミノ酸配列をすでに同定されている他の3種の鱗翅目昆虫細胞のそれと比較したところ、全体的に保存性が高く、IAP特有のドメインであるBIRやRING fingerが検出された。現在SpLi細胞やLd652Y細胞のIAPのNPV感染にともなう発現変動を調査している。