ウイルス感染により誘導される細胞の生体反応の1つにアポトーシスと呼ばれる現象がある。この誘導はシステインプロテアーゼであるカスパーゼの連続的な活性化によることが知られている。しかし、鱗翅目昆虫ではSf9細胞とBmN細胞で実行型カスパーゼが1種類ずつ同定されているにすぎず、アポトーシスの誘導機構はあまり解明されていない。そこで、他の鱗翅目昆虫細胞の実行型カスパーゼの同定を試みた。
Sf9細胞の実行型カスパーゼの活性部位からプライマーを作成し、SpLi、TN368、Ld652Y細胞のcDNAを用いてRT-PCR法を行った。その結果すべての細胞で実行型カスパ〓ゼと思われるバンドが検出された。これらの中でSpLi細胞の実行型カスパ〓ゼの全塩基配列を決定した。SpLi細胞とSf9細胞の実行型カスパ〓ゼのアミノ酸配列を比較したところ、活性部位・プロセシングサイトが保存されており、アミノ酸全配列に渡って保存性が極めて高かった。現在は、SpLi細胞の実行型カスパーゼを発現するベクターを作成し、詳細な機能解析を行うと同時に、TN368およびLd652Y細胞の実行型カスパーゼの全塩基配列の決定を試みている。