カイコの形質転換体作成が可能となり、カイコ個体において有用物質の生産や、遺伝子の機能解析が容易に行えるようになった。その際、導入遺伝子の発現時期ならびに発現組織の制御がとりわけ重要である。特に、熱ショックのような特別な物質の投与を必要としない方法での目的遺伝子の発現誘導は、遺伝子の機能解析や個体におけるタンパク質生産等に有用である。そこでカイコ由来のhsp70プロモーターの利用が考えられるが、現在のところ得られていない。 われわれは、形質転換カイコにおける利用を目的としてカイコ・hsp70遺伝子のクローニング、構造解析、およびプロモーターの解析を行っている。これまでに、カイコESTライブラリーの解析から3種のhsp70ホモログが得られ、これらのひとつが熱ショックによって強く発現誘導されること、ゲノム上に4コピー存在していることを明らかにしている。現在、このカイコ・hsp70遺伝子の構造解析およびプロモーター領域の解析を進めており、今回はカイコ・hsp70プロモーターの構造、および発現特性に関して報告する。