日本蚕糸学会 学術講演会 講演要旨集
日本蚕糸学会第72回学術講演会
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絹糸腺内フィブロインタンパク質の溶出様相
津田 英利小林 将俊田中 俊久井上 俊一馬越 芳子馬越 淳
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p. 109

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抄録
フィブロインタンパク質は後部絹糸腺で合成され、中部絹糸腺に多量にいわゆる液状絹として保存された後、吐糸管を通して繊維化し糸となる。また絹糸腺内フィブロインや繭には多くの金属イオンが含まれ、特にカルシウムイオンとカリウムイオンが多く含まれている。フィブロイン希薄溶液を用いた実験において、カルシウムイオンとカリウムイオンがフィブロイン溶液のゲル化に深く関与しており、濃度依存性があることが明らかになっている(Kobayashi et al., 2001, Transaction of the materials Research Society of Japan)。カルシウムイオンとカリウムイオンがフィブロインタンパク質の物性に重要であると考え、絹糸腺中部を前区、中区、後区と別け、それぞれに対するカルシウム、カリウムイオン存在下での溶液への溶出様相を観測した。その結果カルシウムイオンにおいては16mMで最もタンパク質溶出が少なかった。対してカリウムイオンでは32mMで最も溶出量が少なかった。これらより高濃度になった場合は対象区(MilliQ水)より若干少ないか、もしくはほぼ同等にまで回復した。またマグネシウム、ナトリウムイオンに関しても同様に実験を行ったが、ナトリウムイオンでのみ濃度依存的に溶出が少なくなるという結果になった。実際カルシウムイオンは絹糸腺中部の中区、後区より前区の方が少なく、カリウムイオンの方が重量比で多く含まれている。よって現段階で我々はカルシウムイオンが液状絹のゲルとしての物性コントロールしていると考えている。
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© 2002 社団法人 日本蚕糸学会
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