抄録
本研究の目的は,芸術的問題解決を通して郷土の伝統音楽に対する価値を見出すことで,学習者がどのように音楽科の教科内容を獲得するかを明らかにすることである。芸術的問題解決は日常での直接経験との連続性の中で生じたズレを,音・色・身体・言葉などの質的媒体で思考し解決することである。本研究では,沖縄の「ハレ」の音楽,特に祝いの場の音楽を扱う。実践分析の結果,生徒が日常的に感じ取っている祝いの場の音楽の質(内容的側面)が,音楽の形式及び文化的側面と結びつくことで,新たな音楽的な見方が得られることが分かった。そして,形式・内容・文化的側面が統合され新たな価値が見出されると,味わいが深まることが明らかとなった。生活経験との連続性をもった郷土の伝統音楽の場合,特に内容的側面の質は日常の直接経験の中で感受されているため,その質を想起することが実感を伴った音楽科の教科内容の獲得につながることが分かった。