抄録
本研究の目的は,教育行政や学校現場,教員養成の場で教科内容を軽視する風潮が進む中,イギリスで重要性が指摘されている「力強い学問的知識」論に基づき,歴史的思考力育成の観点から,社会科探究学習の事例分析を通して,日本の歴史学習における「力強い学問的知識」の意義を明らかにすることである。考察の結果,概念探求型社会科の歴史学習が歴史理論としての「力強い学問的知識」を基軸とした構成であることを明らかにした。また,問題解決型探究学習において,歴史事象に対する「見方・考え方」が「力強い学問的知識」として探究を深め,現代社会を捉える力に繋がることを示した。さらに,「力強い学問的知識」を備えた「知の創造者」となるために,教師自身が探究をすることの重要性を再確認した。