抄録
本稿の目的は,林(2024)を踏まえて,再度,道徳科の教科内容について検討することである。まず,学習指導要領における道徳科の内容と目的を確認し,道徳的価値と道徳的価値観の指導について検討した。ついで,内容として論じるべきことは,道徳的諸価値か教材かを問い,結果として,道徳的諸価値と内容項目と教材の三者を取り上げる必要性を説いた。ついで,学問中心カリキュラムの視点から道徳科の親学問の検討を行った。結論として,もし,道徳科に対する根拠づけの学問が必要だとするならば,人格の完成を目的として関連するさまざまな領域にまたがる包括的な道徳教育内容学を構築するしかないということを示し,道徳科に関しては無理に親学問を想定しなくてもよいのではないかと提案した。