2016 年 37 巻 11 号 p. 567-569
科学警察研究所は,警察庁付属の国立研究機関で,犯罪科学に関する総合的な研究を行っている。筆者の所属する犯罪行動科学部では,心理学,社会学などの「行動科学」に基づき,少年の非行防止,犯罪被害の予防,捜査の支援などに資する研究を進めている。筆者自身は,これまで,主に少年の非行防止や犯罪予防に関する研究を行ってきた。その過程で,犯罪の被害にあわれた方々の多くが,ほとんど異口同音にこう語られることに,強い衝撃を受けた。「こんな思いをするのは私たちだけでたくさんです。二度とこんな事が起きないようにしてください。」この痛切な言葉に,自分は,研究活動を通じてどのように応えることができるのか。それが,常に頭のなかにあった。本稿では,科学が支える子どもの被害防止の実現のために,「危険なできごとカルテ」や「聞き取りマップ」,そして「予防犯罪学」の構想を紹介する。