低温マトリックス単離赤外分光法を用いた炭素クラスターの研究を中心に,最近のクラスターサイエンスの発展について紹介する。とくに,炭素数が10以下の基本的なクラスターの幾何学的構造に関して,低温マトリックス単離赤外分光法の結果と,高分解能赤外分光法およびab initio計算の結果とを比較する。ab initio計算の結果では,奇数の炭素数をもつクラスターは直線型であり,偶数の炭素数をもつクラスターは歪環型であるという報告があるが,低温マトリックス単離法では,C3クラスターからC9クラスターまで,すべて直線型であるという結果が得られている。また,炭素とその同族元素であるケイ素との混合クラスターについても,低温マトリックス単離赤外分光法による最新の研究結果を紹介する。