表面科学
Online ISSN : 1881-4743
Print ISSN : 0388-5321
ISSN-L : 0388-5321
高次フラーレンの表面電子状態とフェイゾンライン
吉田 満帆藤田 光孝大澤 映二
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 17 巻 2 号 p. 62-67

詳細
抄録

球殻炭素クラスター“フラーレン”として,C60,C70以外にもC76,C84などがすでに単離されている。これらフラーレン分子群の構造は,12の五員環が六員環の炭素原子ネットワークに入ることによって球殻状に閉じている。炭素数76以上の高次フラーレンの構造は,一般に対称性が低く,異性体もいくつか存在する。これら高次フラーレンの構造を多面体としてとらえ,展開図法を用いて平面上で眺めることによって,おのおのの異性体がもつ個性を抽出することが可能である。特に五員環の相対的な配置によって定義されるフェイゾンラインは,結合交替や安定性のみならず,フェルミレベル近傍の電子状態にも大きな影響を与える。そのため巨大分子としての高次フラーレンの表面電子状態を研究する際に,フェイゾンラインは有効であると考えられる。たとえばSTMを用いたフラーレンの直接観察による,異性体同定や電子状態推定のための,新たな手段としてフェイゾンラインは役に立つであろう。

著者関連情報
© 社団法人 日本表面科学会
次の記事
feedback
Top