コンピュータ ソフトウェア
Print ISSN : 0289-6540
データ型に着目した形式仕様記述からの状態遷移系の抽出
三好 健吾日下部 茂荒木 啓二郎
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2006 年 23 巻 2 号 p. 2_211-2_224

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抄録

ソフトウェア開発において,開発の早期に十分な要求分析を行い仕様や設計を検証することは開発の後期に発生する不具合の低減に有効である.仕様や設計の検証手法には多くの種類があり,それらを組み合わせることで開発対象の様々な面に関する検証を行うことができる.本研究では検証手法の中でも,形式仕様記述言語を用いた手法とモデル検査との系統的な連携を対象としている.形式仕様記述言語は開発対象の機能的側面を曖昧性なく記述することができ,支援ツールで実行可能なものであればアニメーションによって仕様レベルでの振る舞いの確認も可能である.しかしながら,支援ツールによって網羅的に振る舞いを検証するには大きなコストが必要となる.一方モデル検査は,開発対象をモデル化し,その振る舞いを自動的かつ網羅的に検証することができるが,その一方で適切なモデルの構築や構築されたモデルと開発対象の機能との関連付けが容易ではない.本研究では,形式仕様記述言語で記述された機能的側面を重視した厳密なモデルからの,モデル検査可能な状態遷移系の抽出を適切な抽象レベルで,かつ低コストで系統的に行うことを目指している.これにより,開発の早期において機能に関する側面と振る舞いに関する側面の両方の性質の検証が容易になる.具体的には,モデル指向の形式仕様記述言語VDM-SL (Vienna Development Method Specification Language)で記述されたモデルから,FSP (Finite State Processes)で記述された状態遷移モデルを系統的に抽出する方法を提案する.

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© 日本ソフトウェア科学会 2006
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