コンピュータ ソフトウェア
Print ISSN : 0289-6540
グラフ書換による計算折り紙のモデル化と実現
高橋 英和井田 哲雄
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 27 巻 2 号 p. 2_2-2_13

詳細
抄録

本論文は,折り紙を折るという操作のグラフ書換を用いた数理的なモデル化の試みである.折り紙による図形の構成は,折り紙の集合OとO上で定義された折るという二項関係↬からなる抽象書換系(O, ↬)と捉えることができる.また,折り紙自身は,面の集合ΠとΠ上で定義された面の隣接関係∽,重なり関係≻の3つの要素の組(Π, ∽, ≻)として抽象化することができる.更に,抽象化された折り紙をハイパーグラフを用いて表現し,折り操作をグラフ書換変換により実現する.実際に,紙を折るという操作を計算機に実装するには,面の分割や重なりを判定するといった実平面を定義域とした幾何的な数値計算と,面のつながり探索や重なり順序の構成といった純粋に離散的な記号計算の両方が要求される.この2種類の計算が時に複雑に絡み合い,折り操作のアルゴリズムを難しくしている.本論文で提案するグラフ書換変換の方法は,これら2つの計算を分離し,折り操作のアルゴリズムを分かりやすく記述できるという利点を持ち,今後,折り紙の更に高度な問題の解決へ導くものである.

著者関連情報
© 日本ソフトウェア科学会 2010
前の記事 次の記事
feedback
Top