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Print ISSN : 0289-6540
相手の「協力度」を考慮する戦略とネットワーク上での協力の進化
岩田 学秋山 英三
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2011 年 28 巻 1 号 p. 1_103-1_115

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抄録

本研究では,様々なネットワーク構造を有する集団において,各プレイヤーの「相手の協力度(相手がどの程度協力的か)」を考慮した意思決定が協力の進化に与える影響を分析した.コンピュータシミュレーションを用いて,プレイヤーが相手の協力度を考慮しない場合,相手の「自分に対する」協力度を考慮する場合,相手の「皆(全隣人)に対する」協力度を考慮する場合について,集団における協力の進化を分析した.この結果,以下の2点の知見を得た.(a) 各プレイヤーが相手の協力度を考慮して意思決定を行う場合,たとえ協力者を裏切る誘惑が大きくなっても,集団における協力行動はそれ程衰退しない.一般に,各プレイヤーが相手の協力度を考慮しないとき,相手を裏切る誘惑が大きいほど協力は起こりにくいが,相手の協力度を考慮したプレイヤーの意思決定は,裏切行動の進化を抑制することができる.
(b) 特に,スモールワールドネットワークやスケールフリーネットワークのような複雑ネットワーク構造を持つ集団においては,プレイヤーが相手の「皆(全隣人)に対する」協力度を考慮する場合の方が,相手の「自分に対する」協力度を考慮する場合よりも協力が進化しやすい.

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© 日本ソフトウェア科学会 2011
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