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Print ISSN : 0289-6540
クラウド時代の暗号危殆化リスク
猪俣 敦夫岡本 栄司
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2013 年 30 巻 2 号 p. 2_14-2_22

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抄録

暗号は安全な通信を確立するための重要な要素技術の1つである.現代暗号の安全性は,数学的に証明された解読計算量の困難性によるものである.現在最も利用されているRSAは,厳密な意味で素因数分解問題の解読困難性の等価性については示されていないが,一般的にほぼ等価に近い問題と認識されており,現存する計算機環境では多項式時間内に解くことが困難である.しかしながら,画期的な解読アルゴリズムの創出や計算機性能の向上により,安全であると言われていた暗号が脆弱化するという状況が起きる.これは暗号危殆化と呼ばれる.もちろん,分解が成功したことが必ずしも暗号が解読された,ということは意味していない.重要なことは,暗号危殆化のリスクをあらかじめ認識しておくことである.そこで本論文では,現在までに取り組まれてきた解読(素因数分解)例を取り上げ,暗号危殆化を示すいくつかの指標のうち,解読コストについて焦点を当てることにする.特に,近年利用が急増しているクラウドコンピューティング環境における現実的な暗号解読コストを概観し,今後の暗号危殆化リスクにおける問題について言及する.

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© 2013 日本ソフトウェア科学会
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