社会福祉学
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イギリスにおける福祉国家の変容 : 「サッチャリズム」から「第三の道」へ
岡田 忠克
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2002 年 43 巻 1 号 p. 23-32

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抄録

ブレア政権の「第三の道」が指向する福祉国家は,サッチャー改革が残した遺産に取り組み,新たな福祉国家を創造しようとしている。ブレアの目指すものは,サッチャー政権が行った諸改革からの完全なる転換でもなく,また,労働党左派がいう社会主義でもない新たな福祉国家体制である。そこには過去との連続的側面と断絶的側面が存在している。サッチャーがいう福祉国家体制の「解体」ではなく,「変容」と「改革」を目指し,政府の役割を再考し,現代的諸問題の解消に向けて,市民の自立や経済の再生を目的とするものであった。本稿では,1980年代以降のイギリス福祉国家の変容についてサッチャリズムをとおして考察を行い,どのように1990年代のブレア政権の樹立に連動しているのか,また,「第三の道」がなにを目指し,どのような福祉国家像を措いているのかを明らかにする。本稿は,新世紀を迎え,ポスト福祉国家,ポスト市場主義を実践するイギリス福祉国家の変容を考察することによって,新たな福祉国家体制に関する議論に寄与することを目的としている。

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© 2002 一般社団法人 日本社会福祉学会
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